2016年1月24日日曜日

SATSUKI SHIBANO『 Songe creux - Erik Satie piano collection 』

SATSUKI SHIBANO
柴野さつき
"Songe creux - Erik Satie piano collection"
「うつろな空想」~エリック・サティ・ピアノ・コレクション



Éric Alfred Leslie Satie(1866–1925)
エリック・アルフレッド・レスリ・サティ


01、1ère Gnossienne
   グノシエンヌ第1番

02、Rêverie du pauvre
    貧しき者の夢

03、Quadrille (Le piège de Méduse)
  カドリール舞曲(メデューサの罠)

04、Désespoir agréable
   快い絶望

05、2ème Gnossienne
   グノシエンヌ第2番

06、Avant-dernières pensées
   最後から2番目の思想
   ーIdylle
    牧歌           
        ーAubade
    朝の歌
    ーMéditation
    瞑想
   
07、3ème Gnossienne
   グノシエンヌ第3番

08、Prélude du 1er Acte =La Vocation (Trois préludes du Fils des étoiles)
   第1幕への前奏曲=使命(星たちの息子への3つの前奏曲)

09、1ère Gymnopedie
   ジムノペディ第1番

10、Son binocle (Les Trois Valses Distinguées du Précieux Dégoûté)
   彼の鼻眼鏡(嫌らしい気取り屋の3つの高雅なワルツ)

11、4ème Gnossienne
  グノシエンヌ第4番

12、Songe Creux
   うつろな空想

13、Facheux Exemple
   困った前例

14、Caresse
   愛撫

15、d'Edriophthalma (Embryons desséchés)
   甲殻類の胎児(ひからびた胎児)

16、Seul à la maison (Véritables préludes flasques (pour un chien))
   家でひとり(<犬のための>ぶよぶよした本当の前奏曲) 

17、5ème Gnossiene
   グノシエンヌ第5番

18、4ème Nocturne
   ノクターン第4番

19、Exercices
   練習

20、6ème Gnossienne
   グノシエンヌ第6番




演奏
柴野さつき (フランス製プレイエル・ピアノ< 1870年製、シリアルナンバー:51476 >)



Produced by Yoshio Ojima
Co-produced by Satsuki Shibano



演奏時間
56:00



録音
"Oizumi-cho Bunka-Mura" Hall (Gunma,Japan)
大泉町文化むらホール(群馬、日本)
1994年03月



This album is dedicated to Jean-Joël Barbier
このアルバムを ジャン=ジョエル・バルビエ氏(1920 - 1994)に捧ぐ



MEDIA RINGS   MGCC-1009
1995年02月25日
覆い尽くす、透明な感情。ただ、そこにある、たしかな夢の響き。
サティ演奏と研究の第一人者、故ジャン=ジョエル・バルビエ氏に師事した、仙台出身のピアニスト、柴野さつき氏によるエリック・サティ作品集。


型にはまった、癒しの音楽なんて、もうウンザリ。

好きになるのは一瞬。出会いはYouTube。
偶然目にした、ありふれた小規模な演奏会の模様。展開してゆく、サティの透明な世界。この美しく浮き上がる、内なる響きに惹かれるのは、もはや運命。

柴野さつき氏の演奏するサティは、ちっぽけな感情なんて無縁。哀しみや歓びなんてものは、はなから、存在しないみたい。夢の中の輝きだけが残る。

押し付けがましい超絶技巧や感情も、心の音楽の前では、すべて無意味。漂うサティの遊び心。その夢想的な美意識に、新たな発見があるのかもしれない。

ピアニスト、柴野さつき氏という存在と音に宿る生命。
安っぽい癒しの音楽に仕立てられたりする、エリック・サティの作品。そんなものとは、まったく違ったものであることは確か。

プレイエル・ピアノで奏でる魔法の音楽。そこにある、揺れ動き、空気のように漂う、柔らかな甘さは貴重。


2016年1月16日土曜日

The Bird and the Bee『 the bird and the bee 』

The Bird and the Bee
ザ・バード・アンド・ザ・ビー
the bird and the bee
ザ・バード・アンド・ザ・ビー



作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
01、Again & Again
  アゲイン & アゲイン

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
02、Birds And The Bees
   バーズ・アンド・ザ・ビーズ

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
03、F*cking Boyfriend
  イケないボーイフレンド

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
04、I’m A Broken Heart
   アイム・ア・ブロークン・ハート

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
05、La La La
  ラ・ラ・ラ

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
06、My Fair Lady
  マイ・フェア・レディ

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
07、I Hate Camera
   アイ・ヘイト・カメラ

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
08、Because
   ビコーズ

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
09、Preparedness
   プリペアドネス

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
10、Spark
  スパーク



bonus track for japan:

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
11、F*cking Boyfriend (Ralphi Rosario & Db Radio Edit)
  イケないボーイフレンド

作詞、作曲:Inara George、Greg Kurstin
12、F*cking Boyfriend (Peaches Remix)
   イケないボーイフレンド




演奏
Inara George (ヴォーカル、ファズベース)
イナラ・ジョージ
Greg Kurstin(ファズベースとホルン以外の器楽演奏)
グレッグ・カースティン

David Ralicke(ホルン)
デイビット・ラリッケ


プロデュース:Greg Kurstin  for SKI Productions
       グレッグ・カースティン



演奏時間
00:44:41



録音
Echo Studio, Los Angeles, CA



EMIミュージック・ジャパン   TOCP-70192
2007年03月07日
現実は不思議でいっぱい。トリさんとハチさんの教育的音物語。
多くの著名アーティストの作品を手がける、ロサンゼルス在住の音楽プロデューサー、グレッグ・カースティン氏と、シンガーソングライター、イナラ・ジョージ氏のエレクトロ・ポップ・ユニット ” ザ・バード・アンド・ザ・ビー " のファーストアルバム。


聴かないほうがいい。しばらく耳から離れなくなってしまうから。

このグループ。名前からして ” The Bird and the Bee “ なんて付けて、音楽もふざけているかと思ったら大間違い。至極まっとうなポップス。
一曲目「 Again & Again 」から、すでにお手上げ。爽快なメロディは、くるくる駆け回り、頭の中を独り占め。歌は幸せの呪文のように繰り返す。
” あれ、なんか変だぞ “ と気付いたときには、もう手遅れ。すっかり、愉快な音楽の虜。

最初は、アップテンポな曲に惹かれるのだけれど、ゆったりとしたテンポの曲もいい。
切ない恋心を綴った「 I’m A Broken Heart 〜アイム・ア・ブロークン・ハート」や、悲しみに立ち止まらず、生きてゆこうと誓う「 Spark 〜スパーク」なんかが気になってくる。
言葉をこえた歌の力。ミュージカルの一場面みたいに盛り上げる、ハーモニーの甘い響き。夢心地。すべてが美しい。

レトロな60年代風メロディを纏った、キュートなエレクトロ・ポップ。展開される私小説的な歌世界。なんだかクセになる。繰り返す、幸せな気分。




2016年1月10日日曜日

Chick Corea & Gary Burton『Native Sense』

Chick Corea & Gary Burton 
チック・コリア & ゲイリー・バートン
Native Sense
ネイティヴ・センス



作曲:Chick Corea
01、Native Sense
    ネイティヴ・センス

作曲:Chick Corea
02、Love Castle
    ラヴ・キャッスル

作曲:Chick Corea
03、Duende
    デュエンデ

作曲:Chick Corea
04、No Mystery
    ノー・ミステリー

作曲:Chick Corea
05、Armando's Rhumba
    アーマンドズ・ルンバ

作曲:Béla Bartók (1881 - 1945)
06、Bagatelle, No. 6
     バガテル #6  

作曲:Chick Corea
07、Postscript
    ポスト・スクリプト

作曲:Béla Bartók (1881 - 1945)
08、Bagatelle, No. 2
    バガテル #2

作曲:Chick Corea
09、Tango '92
    タンゴ′92

作曲:Chick Corea
10、Rhumbata
       ルンバタ

作曲:Thelonious Monk (1917 - 1982)
11、Four in One
    フォー・イン・ワン

作曲:George Gershwin (1898 - 1937)
12、I Loves You Porgy
    アイ・ラヴズ・ユー・ポーギー




演奏
Chick Corea(ピアノ)
チック・コリア
Gary Burton(ヴィブラフォン、マリンバ)
ゲイリー・バートン



演奏時間
1:09:55


録音
Mad Hatter Studios (Studio A), Los Angels, CA
1997年


Universal Victor  MVCL-24003
1997年09月27日
浮世に煌めく、内なる音との対話。甘い旋律は重なり、熱き心は音楽に宿る。
『クリスタル・サイレンス』(1973年)以来となる、チック・コリア氏とゲイリー・バートン氏の共演作品。


前回のデュエット作『クリスタル・サイレンス』は、ジャケットの写真が気に入って、大きなレコードを買ったくらい、とても大好きな作品。静かに消えゆく幻想的な音世界が、心地いい。

この『ネイティブ・センス』。かつてのECMレコードの作品のような、魅力溢れるジャケットではないけれど、また別の側面を描いた続編なのかもしれない。

確信に満ちた力強い音世界は、洗練された美しいハーモニーを聴かせてくれる。内省的な幻想なんてものは、ここにはない。

ときに、不協する音も、瞬く間に、見事な甘い響きへと変わってゆく。緻密な空気。溢れだす情熱のきらめき。
二人のダイナミックな饗宴が、とにかく楽しい。ジャズの素晴らしさ。

冷ややかな幽玄の夢ではなく、現実に自分の中にある美の世界。この、血の通った音楽も、またお気に入り。

あとこれもいい。日本盤にのみ収録された、ガーシュウィン作「 I Loves You Porgy 〜愛するポーギー 」。切ない響きに、心惹かれ涙するに違いない。





2016年1月1日金曜日

Nuria Rial 『J.S.Bach: Arias』

Nuria Rial 
ヌリア・リアル
J.S.Bach: Arias
バッハ・アリア集
Chronik Der Anna Magdalena Bach
アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記



Johann Sebastian Bach (1685-1750)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ


Was mir behagt  BWV 208
『狩りのカンタータ』
01、Schafe können sicher weiden(Arie)
   羊は安からに草を食み

Johann Philipp Krieger(1649 - 1725)((原曲))
 ヨハン・フィリップ・クリーガー
Die ausgesöhnte Eifersucht oder Cephalus und Procris:
 『 ケパロスとプロクリス』
02、Einsamkeit, du Qual des Hertzen(Arie)
      孤独

Durchlaucht'ster Leopold  BWV 173a
『いとも尊きレーオポルト閣下よ』
  アンハルト=ケーテン候レオポルト王子の誕生日祝賀の為の音楽
03、Güldner Sonnen frohe Stunden(Arie)
  黄金の太陽に照らされる幸せな時
                     
Jauchzet Gott in allen Landen  BWV 51
 カンタータ『もろびとよ歓呼して神を迎えよ』
04、Jauchzet Gott in allen Landen(Arie)
   もろびとよ歓呼して神を迎えよ

Violin Concerto in G Minor  BWV 1056
『ヴァイオリン協奏曲ト短調』
05、I. Ohne Satzbezeichnung  
06、II. Largo  
07、III. Presto  

Klagt, Kinder, klagt es aller Welt :Köthener Trauermusik  BWV 244a
 子らよ嘆け  :『葬送音楽』
 アンハルト=ケーテン候レオポルト王子の為の追悼音楽  
08、XI. Jedoch der schwache Mensch(Rezitativ)
09、XII. Mit Freuden sei die Welt verlassen(Arie)
10、XXI. Und du betrübtes Fürstenhaus(Rezitativ)
11、XXII. Hemme dein gequältes Kränken(Arie)

Concerto in C minor, for violin and oboe BWV 1060
『ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲ハ短調』
12、I. Allegro  
13、II. Adagio  
14、III. Allegro  

Die Freude reget sich, BWV 36b  
 カンタータ『喜びがわき起こり』
 ライプツィヒ大学学長就任祝賀、誕生日祝賀の為の音楽
15、Mit zarten und vergnügten Trieben(Arie)

Ich habe genug BWV 82
 カンタータ『我は満ちたれり』
16、Ich habe genug... Schlummert ein, ihr matten Augen(Rezitativ & Arie)
   われは満ちたれり、いざ眠れ、疲れし眼よ

Gottfried Heinrich Stolzel(1690-1749)((原曲))
 ゴットフリート・ハインリヒ・シュテルツェル
17、Bist du bei mir BWV 508(Arie)
   御身が共にいるならば  

Lass Fürstin, lass noch ein Strahl  BWV 198
 カンタータ『候妃よ、さらに一条の光を』
 ザクセン選帝侯妃クリスティアーネ・エーバーハルディーネの為の哀悼頌歌
18、Verstummt, ihr holden Saiten(Arie)
    鳴るを止めよ、汝らやさしき琴糸よ




演奏
Nuria Rial(ソプラノ)
ヌリア・リアル
Julia Schröder(ヴァイオリン、指揮)
ユリア・シュレーダー
Benoît Laurent(オーボエ)
ブノワ・ローラン

Kammerorchester Basel
バーゼル室内管弦楽団


演奏時間
01:18:10


録音
スイス、ミュールハイム
2013年4月



DHM Deutsche Harmonia Mundi   88765482752
2013年12月17日

音楽で巡る、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの妻アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記。
自由な作曲活動が許された、ケーテン時代に生まれた世俗音楽集。


ここに収録されたアリアの多くは、他の曲を転用して詞を変えたもの。だからといって、つまらない訳じゃあない。かえって、世俗的な詞を与えられたおかげで、厳かな雰囲気が薄まって、旋律の美しさが際立っているのかもしれない。その響きは、あたたかな一条の光が射し込み、どこか安らぎに満ちている。

音楽を豊かにする、スペイン・カタルーニャ出身のソプラノ歌手、ヌリア・リアル 氏の歌唱が素晴らしい。魂が込められた澄んだ歌声が、心に響いてくる。この甘い響きの優しさを、生涯忘れることはないだろう。

お気に入りは、バッハが妻アンナ・マグダレーナに贈ったとされる音楽帳に含まれる、「 Ich habe genug BWV 82~われは満ちたれり、いざ眠れ、疲れし眼よ 」、「 Bist du bei mir BWV 508~御身が共にいるならば 」。とりわけロマンチックで美しい。妻への愛する気持ちを込めたのかもしれない。

何と云っても一番は、舞い上がる旋律に、ただ身をまかせること。ふと気付けば、もうすっかり、俗世間の煩わしさから解放されている。